内燃機関車の救世主になるか?次世代の自動車燃料として期待される「合成燃料」について解説します

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世界では二酸化炭素(CO2)の排出を減らすために、様々な施策を行っています。その中で自動車はCO2の排出量が多いので、自動車から排出されるCO2を減らすことが世界の車メーカーに求められています。

その中で主流となっている内燃機関(エンジン)車がCO2が一番排出されるので、各国では2035年に内燃機関車の新車販売を禁止すると決めています。日本もこの世界的な流れに乗って、2035年までに内燃機関車の販売をゼロにするという目標を掲げています。

ただ欧州連合(EU)は、2023年に「合成燃料」を使った内燃機関車に限り、2035年以降も内燃機関車の販売を認めると発表しました。

それではなぜ、EUは合成燃料を使った内燃機関車の販売を認めるにいったたのでしょうか?今回の記事では、「合成燃料」とは何なのか?その特徴やメリットとデメリット、そして、日本は2035年以降も内燃機関を使う自動車の販売を認めるのか・・その辺りのことについて考えていきたいと思います。

目次

合成燃料はまず再生可能エネルギー由来の電気で水を分解して水素を作り、工場などから排出されたCO2を合成して作る燃料です。合成する過程でガソリンやディーゼル油などと同じ成分にします。

自動車を走らせる時に、エンジンでガソリンなどを燃やせばCO2を排出しますが、合成燃料を作る時にCO2を使うので、相殺されてCO2の排出は実質ゼロとみなされます。そのため、「人工的な原油」とも呼ばれています。

新車販売が全て電気自動車(EV)になったとしても、世の自動車の大半が内燃機関車である状況は当面変わりません。日本で販売されているガソリンに合成燃料を5%混ぜることで、EV約300万台を新規導入するのと同等のCO2削減効果があるという試算もあります。

合成燃料の一つ目のメリットは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの技術をそのまま生かせることです。
二つ目のメリットとして、ガソリンスタンドなどのインフラをそのまま使えることです。日本では内燃機関車のサプライチェーン(供給網)が発達しています。そのため、ガソリンスタンドなどで働く人の雇用や整備工場などを維持できるという期待も大きいです。

画像提供:写真AC

合成燃料の普及の最大の課題は価格

合成燃料はCO2の回収や再生可能エネルギーで水素を作るのにコストが高くなってしまいます。2021年時点で合成燃料を生産するコストは1リットル約1300円かかると想定されています。

今は、CO2の回収技術の発展や再生可能エネルギーの価格下落で生産コストは下がると思われますが、本格的に量産が始まったとしても1リットルあたり260円ぐらいかかるとされていて、現在のガソリン価格より高くなってしまいます。

大量に生産できない

合成燃料の生産には「水素」が必要になります。しかし、燃やしてもCO2を排出しない水素は、脱炭素社会では様々な分野で需要があります。そのため、内燃機関車の需要をすべて賄うのは難しいとされています。

社会全体の脱炭素を進めるためには、電動化が難しい船舶や航空機向けを優先した方がいいという意見もあります。

画像提供:写真AC

冒頭でも述べましたが、日本は2035年までに内燃機関車の新車販売をゼロにするという目標を掲げています。しかし、EUが合成燃料を使った内燃機関車に限り、2035年以降も販売を認めるという方針を容認しました。

日本はどうするのか、まだ詳しい情報はないのですが、恐らく合成燃料が量産できるようになり、価格も現在のガソリン価格と同等になれば認めるのではないかと僕は思っています。

トヨタやマツダはエンジンの開発を続けると宣言しました。(マツダはロータリーエンジン)そのエンジンはCO2の排出をさせない、または削減するものです。こういう流れからも日本でも2035年以降も内燃機関車の販売を認める公算がたかいと考えます。

合成燃料について解説してきました。

CO2の排出を実質ゼロにできる「合成燃料」は、自動車だけではなく船舶や航空機にも使うことができます。自動車は長い期間内燃機関車が主流となっていて、各自動車メーカーはエンジンに関する技術ノウハウをたくさん持っています。

その技術を無駄にさせないためにも、「合成燃料」の量産化が待たれます。また、ガソリンスタンドのインフラや内燃機関車の整備技術などそのまま使えるのも大きなメリットです。自動車の価格もEVより内燃機関車の方が安いでしょう。

メリットの方が大きい合成燃料の実用化が待たれます。2020年代後半には実用化されるよう期待しています。

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この記事を書いた人

長野県松本市在住のサラリーマンです。
松本市内を中心にカメラを持って被写体を求めて彷徨っています。
ビギカメラでは、カメラや社会・経済など気になる情報を発信していきます。

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